透明な海



「もしかして露木君――」

十織は潤の通っている学校名を続けると、同じように、そこに通っていないかと確認する言葉を続けた。

「……そうだけど」

十織は声帯を閉めたような声で「うわあ」と発し、楽しそうに目を輝かせた。

「素敵な偶然だ。おれの幼馴染の女の子もそこに通ってるんだ。頭突きで攻撃する女の子」

潤は少し悩んだあと、口を開いた。

「七瀬?」

「そうそうっ。なな、なにか言ってた?」

「なんとかだから十織も飴食べないのかなとか」

「へええ、そうか。なな、いつも飴持ってるからね」

「おう。まあ、おれは毎度断るんだけど」

「へええ。おれもいつも、気持ちだけもらってる」

「なんて断ってっか知らねえけど、もうちょい丁寧に断ってやれば? あいつ、ちょいへこんでるようにも見えたぞ」

「ああ……そうか。確かに、少し冷たい言い方だったかもしれないね」

ありがとうと純粋な笑みを見せる十織へ、潤は別にと短く返す。

「ところで、その……下谷はどこ通ってんの?」

十織は小さく笑った。

「呼びやすいように呼んでくれていいよ。十織でもなんでも」

どきりとした。やっぱりこいつ怖い、と腹の中に呟く。なんでおれが十織と言いたいとわかったんだ?――。

「ななはおれのことを十織って言ったみたいだし、初めて聞いた音の方がしっくりくるっていうのはよくわかる」

「……お前、よく『気持ち悪い』って言われねえか?」

十織は困ったように笑った。

「直接言われたことはないけど、友達は少ないよ」

「驚かねえ」

「気持ち悪いかな、おれ」

「なんつうか……なんでもお見通し感が」

十織は小さく唸った。

「特に見通してるつもりはないんだけどね。でも確かに、そう感じさせてる可能性は否定できない」

「その変に従順なところとか。結構あるかもよ、気持ち悪いところ」

「そうだね」と十織は困ったように笑った。