一つの椅子の上で、二つの手が触れ合った。
真珠のような白さを持つ手と、それと比べると日焼けしているようにも見える手だ。
相手の口元に浮かぶ笑みに潤の心臓は跳ね、彼にこの季節には望まない感覚を与えた。じんわりと汗が滲んでくるようだった。
「すみません」と声を重ね、互いに手を引いた。
「周り見てなくて」と苦笑する相手に、昨日の大学生だと潤は思った。
大学生の方が先にその場を離れ、一つ空けて隣の席に着いた。
潤は同時に求めたその席に着き、勉強道具を出した。もっとも、もう勉強をする気など失せていたのだが。こんな監視されているような緊張感の中で宿題など捗るはずがない。
彼の威圧感のようなこれはなんなのだろうと考える。特別な人間など存在しない、人間など皆同じようなものだ――よくわかっている。それゆえ人間がつまらない。
しかし。
あのすべてを見透かしてしまうかのような目には、防衛反応のようなものが働いて仕方ない。自分の中に、相手が知っておもしろいと感じられるものなどないとわかっていてもだ。
「君、昨日もいたね」大学生は言った。
なんで話し掛けてくるのだと強く思う。
普通こんなところで初対面に等しい者に声など掛けるか。おれは掛けない――。
「……ええ」
「高校生?」
「……ああ、はい」
違うと意味のない虚言を吐くかと一瞬悩んだが、あの目を欺けるとは思えなかった。
「へえ」と、大学生はいやに穏やかに微笑んだ。
この場を離れる理由として自然なものはなんだ、と潤は思考を巡らせた。
トイレ、飲料の購入、誰かからの呼び出し――。
おれを呼び出すようなやつなんかいねえし、と潤は心中に涙声を発した。
同じように、そんな必要とされてねえよと続ける。



