透明な海



家に帰ると、「おかえり」と静香の声が言った。

潤は「いたんだ」と短く返す。

「潤の部屋、もぬけの殻でびっくりしたよ」

「出掛ける前に会ったろうが」

「あれ、だっけ?」

「ていうか人の部屋見てんじゃねえし」

「兄の部屋になんか興味ないって。冗談だっつうの」

潤はダイニングテーブルに袋を置いた。

「これあげる」

「なにこれ?」

「菓子」

「どんなメロディついてるの?」

「歌詞じゃねえ」

おもしろかった、と問う静香へ、全然と即座に返す。笑いのレベル高いねえと苦笑する彼女へはお前大丈夫かと返した。

「そうだ潤、蜂蜜レモン。今朝お預け食らったから」

「お預けのつもりはなかったけど」

「いいから」

早くとキッチンを指で示す静香へはいはいと返し、潤はキッチンに入った。