素材や色味の違いを比べ、しばらく悩んだ末に鉢植えを購入してホームセンターを出た。
自転車のロックを解除してスタンドを上げる。
道端の野草に目を向けながらペダルを漕ぎ、やがて緩やかな坂を下った。
携帯電話の画面に綴られた文字を真似て手を動かし、最後、鉢植えの状態を確認した。
「……悪くは……ないよね。ね、ホソウリさん?」
窮屈だったら庭にいい場所を探すからねと苔を撫で、十織はホソウリゴケの性質に合った場所に鉢植えを置いた。
他の植物の状態も確認し、異常がないことに胸を撫で下ろす。
リビングに入ると母親も戻ってきた。
「苔、どう?」
「大丈夫だと思う」
「『思う』?」
「窮屈そうなら、庭に場所を作るよ」
「裏になっちゃうよ?」
「いいでしょう。そこがホソウリさんのお好みに合うなら」
「ホソウリさん?」
「ホソウリゴケっていうんだ、あの苔。ところで、アムールの散歩は済んだ?」
「ばっちりよ」
「そう」
「ああそうだ。今夜、なに食べたい?」
「……ラーメン」
「ええ……?」
絶対そうじゃんと苦笑し、十織は「そうだなあ」と改めて考えた。
「洋食がいい」
「ラーメン中華だけど」
「却下くらったじゃん」
「まあね」といたずらに笑い、母は「洋食かあ」と腕を組んだ。
「じゃあ、ハンバーグとか?」
「ああ、それなら煮込みがいい」
「オッケー、煮込みハンバーグね」
何味にしようかなあと言いながら、ダイニングチェアの背もたれに掛かったエプロンを着け、母親はキッチンに入った。
十織は鳥籠の前に立ち、アムールの名を呼んだ。
今日はどんな姿が見られるだろうと想像しながら、彼は言葉を選んだ。



