透明な海



携帯電話が「なな」からの着信を知らせたのは、梅雨に入ってしばらくした頃だった。

電波越しにその日の予定を確認してきた彼女へ、特に予定はないよと答えた。

「やった」とななは嬉しそうに言った。

「じゃあさあ、今日ちょっと、これから手伝ってほしいことがあるんだけど」

「手伝う?」

「そう。内容はあとで教えるから、とにかく今からわたしの家にきてくれない? ああ、場合によっては必要になるかもしれないから、ちょっとした入れ物みたいなの持ってくるといいかもしれない」

「入れ物……。素材は?」

「なんでもいいと思うよ。プラスチックとか、硝子とか」

「そうか、わかった」

「どうもね」

じゃあ待ってるからと言うななへはいと返して、十織は通話を切った。