私室の床に鞄を置いた。
白のティーシャツに黒のパンツ、黒のロングカーディガンに着替え、部屋とベランダの植物の状態を確認して私室を出る。
リビングに入ると、「出掛けるの?」と母に声を掛けられた。
「ちょっと散歩に。アムールのおうち掃除してからね」
「そう」
鳥籠の前に立ち、十織はアムールの名を呼んだ。
「ただいま」
「デカケルノ? トオリハ オデカケ?」
「そう。少しお散歩だよ」
「アムチャンモオサンポイコッカ」
「アムールもお散歩する?」
「コマツナ」
「小松菜? 小松菜食べたの?」
「タベタ」
「そうか。よかったね」
「トウノウ モ」
「とうのう?」
「豆苗だね」母親が言った。
「ああ、豆苗」
「いい感じに伸びてたからあげたの」
「なるほどね」
「トウミョウ」
「そっか、豆苗も食べたんだね。おいしかった?」
うん、とアムールは小さく発した。
「よし。じゃあアムール。ちょっと、お隣行こうか」
「オサンポ」
「お散歩はちょっと待ってね。先におうち綺麗にするからね」
「アムチャン キレイヨ? カワイイ。カワイー カラ キレイ」
「うん。アムールはかわいいよ。だから、そんなアムールに似合うおうちにするんだよ」
十織が言うと、アムールはどこか不満げに俯いて黙った。
十織は扉を開けて手を入れた。アムールはそっとその指に止まる。
「うん。ありがとう、アムール」



