透明な海



「遅かったな」

駅の前で、アキは言った。

「待ってる必要なんてないのに」

「孤独じゃんか」

「おれが早退してたなんて場合はどうするの」

「それこそ孤独だってか。まあ確かにそうなんだけどよ。今までそんなこと一回もなかったじゃんか」

十織は小さく笑い返した。

「アキらしいね」

「えっ、馬鹿っぽい?」

「いいやそんな。過去の経験から答えを出す――どこもおかしなところはないでしょう」

「まあ、十織に訊いてもあてになんないってとこはあるよな。お前、なんでも受け入れるじゃんか。そうてい、ぞうてい……じゃなくて」

「肯定?」

「ああそう、それ、こうてい」


電車に乗り込むと、比較的空いた車内で、アキは「ラッキー」と嬉しそうに声を発して座席の端にある手すりに寄り掛かった。

「おれここ好きなんだわ」

「よく知ってる」