透明な海



直前に鞄を両腕に抱えて電車に乗った。

高校受験を控えて勉学に勤しんでいた頃に痴漢のニュースを頻繁に見聞きし、高校入学から電車を使うようになってから、誤解されるのだけはごめんだと言ったアキが提案したものだ。


朝の電車内は情報量が多い。乗っている人が多いのだから当然だ。

携帯電話を操作している人、荷物を抱えて眠っている人、手に文庫本を載せた人、特別になにかしていることはない人――。

電車内の様子というのはいつ見ても似たようなものだが、何度見ても飽きない。


隣に立つアキへ何気なく視線をやり、十織は少し驚いた。立ったまま眠るとは器用な人だなと思う。もう何度目かわからない。

電車が混んでいるため、周りの人に電車の揺れのせいにして体重をかけることができ、そうすると自然と眠ってしまうのだと本人は言っていた。

アキの他にも彼と同じように眠っている人がいるが、やはり寝方も同じなのだろうかと想像が膨らむ。