透明な海



「ななは今朝、なに食べた?」

「なに診断?」

「世間話だよ」

「玉子焼きと冷凍たこ焼き。ああ、あと冷凍の今川焼き」

「なならしいね」

「たこ焼きは昨日の夜から食べたくて。十織は?」

「おしるこ」

「お正月?」

「賞味期限がぎりぎりの切り餅が出てきて」

「そうなんだ。カビてなかった?」

「たぶん」

「ん?」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと確認したから」


くしゃくしゃと音が聞こえて視線を上げた。

棒を咥えたななが、「飴食べる?」と棒についた飴を差し出してきた。

「糖分は充分に摂ったかな」

「もう当分摂らなくていい、って? 糖分だけに? 当分取らなくてって?」

「……そうだね」

幼馴染の愉快そうな笑い声を聞きながら、十織は左手首の時計を確認した。

「おっと。おれ、そろそろ行くね」

「おやおや、そりゃ寂しくなるね」

「なにかあったら連絡して。生き物とパズルなら力になれると思うから」

「そりゃどうも」とななはゆっくり言った。

そしてなにか言いたげに目を見てくる彼女へ「どうした?」と問えば、「なんでもない」と笑みを振る。

「行ってらっしゃい」と、飴の棒を持つ親指と人差し指以外の指を広げる。

十織は「行ってきます」と小さく頷いて玄関へ向かった。