透明な海



なになにと恐れるように言う七瀬の前に、彼はペットボトル飲料についていたドリンクカバーに入れたペットボトルを置いた。

「……爆弾?」

「それは刺激が強すぎる。……見てみ」

「これ、触ったら破裂するとかじゃないよね」

「おれは七瀬を恨んでねえ。中身はお前が望んだもんだ」

「……望んだもの? 露木君になにか望んだっけ」

「だめだめなやつみたいに言うなよ」

「全然覚えてないんだもん」と言って、七瀬は慎重にペットボトルを手に取った。

「……出すよ?」

「好きにしたまえ」

七瀬は一度深く呼吸し、ゆっくりとペットボトルをカバーから出した。

ペットボトルを見て、彼女は露骨に嫌な顔をした。

「なにこれ」

「嫌がらせじゃねえんだよ」

「いや、露木君と間接キスがしたい願望とか一ミリもないし」

「使用済みじゃねえし」

「以外にペットボトルの入手法なんかないでしょう」

「馬鹿か貴様は。今は恵みの時代だ。インターネットというものがある――」

「えっ、ネット使えばその場にないもの作り出せるの?」

「お前、小さい頃頻繁に『人の話を聴け』って言われてたろ。そうじゃねえし。通販ってもんがあんだろうが。親がよく飲み物作るんだよ。そのおすそ分け用の容器として、空のペットボトル、ネットで買って常備してあんの、うちには。その一本をちょうだいしたんだよ」

「へえ、空のペットボトルなんてあるんだ。空のペットボトルもらうのにお金払うだなんて、嫌がらせにしか思えないけどね。そういう使い方があるんだ」

「あとは米の保存とかな」

「へえ」

「まあとにかく、それやる」

わあ、と七瀬は花のような笑みを浮かべた。

「ありがとう。露木君ご自慢の蜂蜜レモンドリンク、飲んでみたかったから」

「時間返せ」と短く返すと、「楽しかったでしょう?」と七瀬は満足げに言う。

「疲労困憊」と返せば「体力つけな?」と短く返され、潤は「くっそ」と苦笑した。