透明な海



振動は新着ニュースを知らせるものだった。

「隣家の女性の腹を刺す…66歳男、殺人未遂で逮捕「子供の泣き声に腹が立った」」――。

愚かだ、と思った。自分くらいの孫がいてもおかしくないほど生きていながら、どうしてこうなのだろうと。

記事の題名の通り、男は隣家から聞こえる子供の泣き声に腹を立て、その子供の母親である女性の腹を刺したという。ほんの数日前の出来事だ。女性は三十代で、命に別条はないという。

やはり人間は愚かだ――。潤は強く思いながら携帯電話をブレザーのポケットに戻し、青い光に歩みを再開した。

どうしてこうなのだろう。すぐに感情的になり、それを制御できなくなれば過激な行動に走る。少し前には、いらいらしたという取るに足りない動機で器物損壊の罪に走った少年がニュースになった。

その少年は十八歳だった。よそや他人様のものに意図的に傷をつけてはいけないということくらい理解できていてもいいはずだ。それくらい園児でもわかるだろう。

やはり人間は嫌いだ――。愚かな部分が多く思えて仕方ない。

「優秀」と評価される人間もいる。しかし、そういう人間にさえ罪人として警察と関わるニュースが流れる。その多くが欲望や歪んだ信仰に呑まれた結果だ。

どうしてこうも自身を制御できないのだろう。

こうして苛立つおれも――。

馬鹿馬鹿しい、と潤は腹の中に吐き捨てた。