透明な海



母親を見送ってしばらくして、潤はキッチンの作業台に置いてあるペットボトルをカバーに入れた。ペットボトルカバーは二年ほど前に飲料メーカーが人気キャラクターとコラボした際に期間限定で商品に付けていたものだ。

そのペットボトルカバーのデザインは全部で五種類あり、静香が「かわいいから」と言って全種類集めていた。

たった今その本人に確認したところ、小さな袋に収められたままのこれは「使わない」だけでなく「そんなの集めてたっけね」といった程度の存在であり、何気なく手に取ったこの一つをちょうだいした。


玄関を出て施錠し、確かに鍵が掛ったのを確認する。

自転車にまたがる妹へ「気をつけろよ」と言うと、「潤もね」と返ってきた。

「案外鈍いんだから」とおちょくるように続けられ、「実妹の貴様も似たところあるぞ」と返すと「じつまいってなに?」と返ってきて、実の妹だという短い説明も億劫で「遅刻すんぞ」と返した。


なんとか間に合うだろうかと考えながら歩みを進めたが、結局、下で点滅していた青の光は消え、上に赤の光が灯った。

ブレザーのポケットに微かな振動を感じ、潤は携帯電話を取り出した。