鞄と図書館の袋を私室に置き、着替えを済ませて袋から一冊抜き取った。
右側のページに「338」の文字が小さく刻まれた最終章に入った頃、玄関の扉が開けられた。
扉が閉まった音に、はあと深いため息が続く。
潤は席を立ち、座卓に視線を走らせた。
「蜂蜜レモン。冷たいの」と言う妹の声へ「了解」と返す。
やがてちょっとした小袋の口を閉じるような金色のビニタイが目に留まり、それを栞代わりにして本を閉じた。
ダイニングテーブルにそれを置き、キッチンに入る。
蜂蜜レモンのできたマグカップをダイニングテーブルに置き、キッチンに戻ってドライフルーツメーカーから輪切りのレモンを取り出した。ぱりぱりに乾燥している。
今朝蜂蜜レモンを作るのに使ったレモンの残りで、外出前に乾燥時間を八時間に設定していた。
皿に並べてキッチンを出ると、着替えを済ませた静香がリビングに入ってきた。
「おお、できてる」と彼女は嬉しそうに口角を上げる。



