透明な海



潤が総菜パンを開封すると、隣の席で七瀬は棒についた飴の包みを剥いだ。

「……お前、飯は?」

潤が言うと、彼女はぽかんとした表情で彼を見た。

「飯。それだけなのか?」

「そんなまさか。もう食べたし」

「いや掃除機かよ」

「人間だよ」

「昼休み入ってからまだいくらも経ってねえけど」

「うん……。まあ、お腹空いてたし」

「……そうか」

七瀬はブレザーのポケットを漁った。

ん、と先端に球体のついた棒を差し出す。

「飴ちゃん食べる?」

「……いや、いらない」

「そう。おいしいのに」

「おう……」

潤は総菜パンをかじった。

「……好きなの、飴?」

「好き。駄菓子が好きなの」

「へえ」

「駄菓子っておいしくない?」

「ああおれ、菓子類好んで食わねえから」

「ええっ? うっそ、そんな高校生いるの?」

「いくらでもいるだろ」

「へええ、絶滅危惧種だね」

「そんなことねえだろ」

「天然記念物の方がよかった?」

「そういうこっちゃねえよ」

「ふうん……」

「ていうかお前、どれだけ飴持ってんの?」

「基本十本かな。制服のポケットに五本、予備としてポーチに五本。他、ポーチにはちょっとした駄菓子が入ってる」

まじめな人には内緒だよ、先生なんてもってのほか、と唇の前で人差し指を立てる七瀬へ、潤は「お前学校になにしにきてんだ」と返す。