「それで? なんかあったの?」
「別に」
「口癖なの?」
別にと返そうとした声を飲み込むと、「『別に』?」と七瀬が挑発するように言ってきた。「くっそ」と潤は苦笑する。
「で、なにかあったんでしょう? いつもと雰囲気が違う」
「占い師かよお前」
「ずぼら?」
「そりゃたぶん『ずぼし』」
「正解」と笑う七瀬へ、「なんなんだよ」と笑い返す。
潤ははあと息をついた。
「ただ、改めてなんかめんどくさいなあと思って」
「めんどくさい?」
「人間ってさ」
「なにがあったわけ?」
「妹が昨日、何気なくある動画にコメントを残したらしい。それで、そのコメントの内容に突っかかってきたやつがいたんだ」
「へえ、災難だったね」
「まあ、それだけなんだけど」
「暇な人として放っておくしかないと思うよ、ああいう人は。結構いろんな動画に出没するよね」
「ああ」
「で、昨日の妹ちゃんはどうしたの?」
「小学生呼ばわりされてもやもやしてた。反論したげで、相談してきたからそれを認めておけって言った」
「認めさせたの?」
「ああ。相手はこっちを小学生だと言う。それはたぶん、小学生程度の知能だと言いたいんだろう。それなら、それを認めて話を進めた方が逃げ道ができる。相手が明らかに的外れなことを言い出したり、言い合いが面倒になってきたら、相手が軽蔑するその『小学生』にもわかる言葉を使えと返せばいい。相手はこちらの『小学生』よりも賢いんだ、簡単な言葉に直すことくらい易いだろう、という意味を込めてな。なにより、こっちの発言を指摘されてもその『小学生程度の知能』のせいにしてしまえばいい」
「……確かに、そんなことがあれば人間ってめんどくさいって思っちゃうのもわからないでもないね。露木君の人嫌いが悪化しなければいいけど」
「……悪化した。もう重症、おれ」
「御愁傷様です。それで、妹ちゃんは勝った?」
「さあ」と潤は肩をすくめた。
「お疲れ様、お兄ちゃん」と七瀬は苦笑する。



