透明な海



部屋に入ると、ななはすぐに小さく笑った。

「本当さ、十織の部屋って、本当に植物園みたいだよね」

「空気は綺麗でしょう?」

「まあね。これだけ植物がある割には湿度が高いとも思わないし」

「いろいろ工夫してるんだ」

「そこまでしてこれほどの植物育てる理由ってある?」

「趣味みたいなものだよ。特別な意味はないけど、楽しいからやる」

「そう言われちゃうとまあ、わからないでもないか。わたしも意味もなく飴食べるし」

「それ趣味だったの?」

「趣味っていうか癖っていうか」

「へえ」

疑わないんだねと苦笑するななへ、十織は疑う必要はないでしょうと同じように返した。


正方形の座卓のそばに向かい合うように座り、十織はグラスを座卓に置いた。

ななは一口飲んでからグラスを置いた。

「なんか、ああいうよさげな豆だって知ったからか、いつもよりおいしい気がする」

「それはなにより」

そっと包み込むように訪れた沈黙の中、ななはブレザーのポケットから携帯電話を取り出した。白地にカラフルなキャンディの柄が無数に描かれたカバーがつけられている。