透明な海



「ああ、これがコーヒーミルとやらだね?」

ななは言いながら、十織の肩からその前を覗いた。

「あれでしょ、豆細かくするやつ」

「そう」

十織はコーヒーケトルに水を入れ、火にかけた。

挽き目を中挽きに調整し、ホッパーに適量の豆を入れてゆっくりとハンドルを回す。

「いい音」とななの楽しそうな声が言う。

粉受けを引き出し、セットしていたドリッパーに挽いた豆を入れた。

ゆっくりと湯を注ぎ、三十秒蒸らす。

その間にグラスに氷を入れ、ミルクを百ミリリットル注いだ。

そこに蒸らしが済んだコーヒーを注ぐ。

「手際いいね」とななは言う。

「さすが、頻繁に飲ませてくれるだけあるね。他の料理は全然できないのに」

「おれの中では、料理とコーヒーは別物なんだよ」

「へええ」

ん、と一方のグラスをななへ差し出し、十織はもう一方のグラスを持ってキッチンを出た。