透明な海



外で待つななの元へ行くと、彼女は新たな飴の包みを開けて棒の先の淡い緑色の球体を口に入れた。

その球体で片頬を膨らませて、「いなくなった?」と不安げに視線を十織の顔へ上げる。

「ちゃんと逃がしたよ」と十織が返すと、彼女は「よかった」と表情をやわらげる。

「飴ちゃん食べる?」と制服のブレザーから自身が咥えているものと同じ形のものを取り出し、十織へ差し出す。

「気持ちだけ」と彼は笑みを返した。

「ねえ、本当にカフェオレ淹れてくれるの?」ななはブレザーに飴を戻しながら言った。

「もちろん。難しいことでもないから」

「やった、嬉しい。そのためにメロン味の飴ちゃん食べてたから」

「ああ、ななはカフェオレとメロンパン食べる人だったね」

「最高の組み合わせでしょ」

「そうかもしれないね」と十織が笑うと、ななは彼の自転車を指さした。

「家まで、後ろ乗せてってよ」

「いいよ」

「やった」と嬉しそうな笑みを見せ、ななは荷台に横向きに乗った。

行くよと宣言してから、十織はゆっくりとスタンドを上げた。このがくんって瞬間好き、とななは笑う。

十織がゆっくりと歩き始めると、車輪が一定の速さで音を刻んだ。

「すぐ隣じゃんとか絶対言わないよね、十織って」

「乗りたいなら乗ればいいと思ってるだけだよ。容易く叶えられる頼みなら、断る理由の方が見つからない」

「優しいんだか理屈っぽいんだか」

「どっちでもいいよ。いずれにせよ、その人にとってのおれはそういう人間なんだ」