透明な海



「はい、塩ラーメンと――醤油ラーメンね」

十織と「ありがとうございます」と声を揃え、反対に置かれたラーメンをそっと取り換えた。

「はい、餃子お待ち」

「ああ、どうも」

潤が会釈すると、男性店員は伝票を置いて「ごゆっくりどうぞ」と残して場を離れた。


「ん」と差し出された割り箸を、潤は礼を言って受け取った。

「……十織、塩なんだな」

「うん。……醤油なんだね」

「餃子、スープに漬けて食ったことある?」

「いや、ない」

「まじうまいぞ」

「へえ。皮でろんでろんにならない?」

「いや、大丈夫。今度やってみ」

「うん、そうする」


「いただきます」と手と声を合わせ、同時に箸を割った。

「……待て、つうかさ」潤は言った。「なんであんとき梨を出したの」

「え? ああ……特に意味はないよ。果物の中で好きなものだから」

「あ、やっぱ梨好きなの?」

「うん」

「あ、そう。へええ」

「なにが好きなの? 果物じゃ」

「おれはやっぱみかん。果物全般好きだけど、みかんが一番」

「ああ、みかん食べるの夢とか言ってたね」

「おう。……伸びる前に食うか」

「そうだね」と十織は、先ほどと同じように笑った。