潤は土手に寝転びながら、首筋に伝う汗を感じた。
「だああ……まじ夏休み最終日だっつうのにくそ暑くね? もうちょい休まねえと学校なんか行けねえっつうの」
「まあ、時間の流れには逆らえないから」十織は穏やかに言った。
「お前なんでそんな冷静なんだよ。明日から二学期が始まるんだぞ? こんなだらだら過ごしてたのに、学校側は容赦なく勉強突き付けてくんだぞ? 突き付けるどころか、自分たちから休み与えといて『お前らしばらく休んでたからペース上げるぞお』くらいなんだぞ?」
「仕方ないよ」
「ありえねえって。お前飼い慣らされてんなよ?」
いやいや、と十織は苦笑した。「飼い慣らされるって。こっちから通ってるんだから」
「お前メンタル最強かよ。なんでそんなかなあ。もうちょい自分アピールしていかねえとまじでやられっぱなしになんぞ?」
「やられるって」
「いやまじ本当に」
「じゃあどう対抗するって言うの」
「その術がねえから困ってんだろうが」
「その術がないなら、おとなしく従っておくっていうのも悪くないと思うよ? ほら。夏休み最後。自然の音に流されていようよ」
「お前暢気かよ」
「そんなぴりぴりしないでさ。ほら、風が気持ちいいよ」
十織の声を合図にしたように、夏の空気が前髪を揺らした。
「いや、からっからの熱風なんだわ、この時期の風なんざ」
「汗は乾くよ」
「乾くもんかよ。風の温度でさらに汗かくわ」
「また夕方に雨降ってくれば楽しいのにね」
「楽しいことあるかよ。倦怠感と登校したい癖とかねえし」
十織は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。