透明な海



視線の先で男女の間を行き来していたシャトルが、ふいに風に煽られた。

「あ」と声を漏らすと、「もったいない」と十織の声が続いた。

「もう少しで百回だったのに」

「え、数えてたのか? あのカップルみたいな二人のバドミントンだろ?」

「そうだよ。うまくてつい見入っちゃって」

「だからって数えねえだろ……」

「癖みたいな」

「数を数える癖とか聞いたことないけど」

「まあ、人間の数だけ癖はあるだろうから」

「いや、いいんだけど。お前がなに数えてようと。他人様の身長体重じゃなけりゃ」

「それはもう見てないよ」

「ぱっと見て数字が浮かぶとかじゃねえのか?」

「そんな優秀に見える? 機械じゃないんだから」

「まあ……」

「ある程度考えなきゃわかんないよ。だからわかろうとして見なきゃ全然わかんない」

「へえ、なによりだ。もうそのことは忘れな」

「おれから露木君に言いたいな」

「ほら、人間って大きな出来事覚えてるから」

「本当に余計なことしたね」と頭を掻く十織を、潤は「忘れる、忘れるから」と笑った。