「いいじゃない。このままじゃあ本当に当てられちゃう」
「えっ、結構近づいてる?」
「それなりにね」
潤は「よし」と手を叩いた。
「まじで今日中に当ててやっかんな」
落ち着いて、と十織は苦笑する。
「いいんだって、ゆっくりで。それと、わかっても言わないでくれると嬉しいな。さりげなく誘ってほしい」
「うわ、まじ乙女だ。そういう女子いるぞ、彼氏に察してリードしてほしいって」
「そんなかわいらしいこと言ったつもりはないけど」
「まあわかった。わかったら黙って誘うよ」
ありがとうと笑みを見せる十織へ、「その代わり」と続ける。
「不正解でも黙ってついてこいよ」
「ええ、今日の『梨狩り』みたいな?」
「そこまでは外さねえから」
「断りたいなあ……。大丈夫かな」
「わかったわかった。本当に嫌なら断れ。その次こそ絶対当ててやっから」
「本当、なんでもしてくれるね」
別にと返して、潤は目を逸らした。
「ただ、おれにとっても初めてなんだよ。こういう友達できたの」
十織がふっと笑うのがわかった。嬉しいな、とでも聞こえてくるようだった。