透明な海



「十織、学校楽しいか?」

駅へ歩き始めて間もなく、いとこは言った。

「充実してるよ。……アキは? なにかあったの?」

「そういうわけじゃあねえんだけど。ただ、全然違う学校生活なんだろうなって。改めて思ってよ」

「ああ、そうかもしれないね。学校も違うし、同じ学校生活っていうのはまずないだろうね」

「お前くらいのレベルになっと、どんな会話するわけ? 友達とかと」

「なにも特別なものはないよ。至って平均的な男子高校生の会話だよ」

「このモデルいいよなとか言ってるわけ? 背伸びした雑誌とか見て?」

「そういう人もいるよ」

「ふうん……。所詮男子高校生は男子高校生か。で? 十織自身はどんな会話してんの?」

「おれは……」

言ったあと、十織は小さく苦笑した。

「あまり頻繁に話すような友達もいないし」

ふうん、と興味なさげに頷いて、いとこは「ええっ」と声を上げた。

「なにお前、まだ友達も作らず孤独な日々を送ってんのか?」

「そういうつもりはないんだけどね」

「やっぱお前、なんかとっつきくいんだよ。たぶん」

「とっつきにくい?」

「そう。なんかもう、隠し切れねえ知的オーラ的なのがびんびんに発信されちまってんだよ。つかお前、あれじゃん、隙がねえじゃん」

「隙のある人の方が友達作りやすいの?」

「そりゃあそうだろ。女の子だって、あんまり完璧な子よりちょっとぽわんとしてるくらいの方がかわいいじゃんか」

「確かにそういう意見もあるね」

「だからそんな感じで、おれみてえにお馬鹿さんオーラがへらへら出てるくらいのがいいんだよ」

「おれはアキを愚かだと思ったことはないけどね」

「ほら、そうやって『愚か』とか小洒落た言葉使うじゃんか。そういうところだよ」

「おれとしては飾り気ないまっさらな状態なんだけどねえ。でも大丈夫。ちゃんと充実した高校生活送ってるから」

「本当か?」

疑問符をつけ、まじでと心配げに顔を覗き込んでくるいとこへ、十織は「本当だよ」と苦笑する。