いいよ手伝ってあげると言う静香へ、潤は真剣に礼を言った。
「でも、一つ教えて? 潤はなんでその友達がそんなに大切なの?」
どきりとした。十織にここまで尽くす理由――。
わからない、と答えかけて、脳に快感の火花が散った。
「……初めてできた友達だから」
「なにをちっちゃい子みたいな。まあいいや。特別な友達っていうことだけはわかった」
さてと考えますかと、静香は伸びをした。グラスの中身を半分ほど一気に減らした。テーブルにグラスを置くのと同時に、ふうと深く息をつく。
「よし。じゃあ、その友達から聞いた食べ物の名前は?」
「いつ?」
「今まで。知る限りで全部」
「……梨?」
「梨? 他は?」
「……梨。梨しか聞いてない」
「ええ、男子高校生って食べ物の話しないの?」
「いや、そんなこともないんだろうけど、おれらの間では『梨』しか出てない」
「へええ……。女子中学生はもう食べ物の話しかしてないけどね」
「『女子中学生』ってくくりはやめときな」
「ああ、そう? まあいいや。本当に梨しか出てきてないの?」
たぶんと言いかけて、七瀬の飴の話をしたような気がした。
「あと、飴」
「飴? ええ?」
飴、と繰り返して、静香は眉を寄せた。
「なんか意外とかわいい名前が出てくるんだね。もっと牛丼とかかつ丼とか言ってるのかと思った」
「おれらはこれくらいだ」
「ええ……? じゃあ梨が食べたいのかな? 梨狩りに行きたいとか。他のお客さんもいるだろうし、『食事』と『人間がいる』っていうキーワード……ていうか、条件は満たしてるんだけど」
「梨狩り? まあ、とりあえず八月に収穫期を迎える種類もあるけど……」
「じゃあ梨狩りに行きたいんじゃないの?」
「男子高校生が? 友達の男子高校生連れて? そこは行っても恋人ととかさ」
「知らないよ。潤にとってそれだけ特別な友達なんじゃあ、相手にとってもそれくらい特別な友達なんじゃないの?」
「ああ……」
確かに十織はそう言っていたが、と潤は思う。
「でも、梨狩りなあ……」
「一回訊いてみれば? 答え合わせ。ていうか、潤はなんでこんな問題出されたの?」
「いや……話せば長くなるけど」
「ああそう。じゃあいいや」
「冷たいな」と苦笑すると、静香は「別に兄の人間関係とか興味ないし」と同じように返ってきた。



