透明な海



静香は思いついたように「あっ」と声を上げた。「いっそ、逆方向から攻める?」

「逆方向?」

「人間がいる場所ならいくらでもある。だったら、『生きるのに必要』ってところに注目してみるとか。生きるのに必要な行為とか要素ってなんだろうって」

「ああ……。睡眠?」

「じゃあ、マッサージ屋さんとか?」

「渋くね?」

「でも人間いるよ? 気持ちいいマッサージで寝れそうだし」

「いや、でも……。高校生が友達と行きたい場所だぞ?」

「ええ……?」

「お前中学生だろうが。よくマッサージ屋さんとか思いついたな」

「なんかテレビでそんな場所出てきたから」

「ああ、そう」

「で、他に眠れる場所は?」

「退屈な場所」

「退屈な場所にわざわざ友達巻き込んで行く?」

「おれは行かねえ。友達がいようと退屈な場所は退屈だし」

「じゃあ却下で」

「ああ、はい」

「なんだろう。なにかを得る場所なのかな。あっ、トイレ」

「いや、すぐ行けよ。あいつ何日我慢してんだよ」

「ああ、そんなに経ってんだ」

「もう結構だぞ」

「へえ……。じゃあだめだね」

「もしまじでトイレだったら本気で謝罪するわ」

「いや、勝手に家とかで行くでしょ」

「おれもすぐ思ったし」

「じゃあ違うじゃん」

「お前が言い出したんだぞ。『なにかを得る場所』だっつってんのに『トイレ』って。どっちかっつうと出すとこなんだけど」

「快感は得られない? 結構我慢してからだと」

「でもそこに友達と行きたいか?」

「わたしは一人でいい」

「おれもだし、十中八九あいつもそうだ」

「ええ……? じゃあどこ?」

「さっぱりわかんねえんだよ」

「よく高校生の頭脳が中学生の頭脳頼ろうとしたね」

いや、と潤は苦笑した。「嫌な言い方すんなよ」