透明な海



「ああ……まじ夏休みがどんどんなくなっていく……」

「楽しい時間は過ぎるのが早いね」

「つか、まじで最後の夢なんだよ。まじで本気で終わるぞ、夏休み」

「大丈夫だって。最終日にでも済ませられるから」

「なら今日でいいじゃんか。誕生日なんだし」

「ええ……なんか大げさになっちゃうじゃん」

「そもそも『夢を叶えていく』っていうこの夏休みの過ごし方自体大げさなんだから。いまさらなにをぬかす」

「やっぱり思いがけず叶うのが嬉しいんじゃん」

「まじか。つか一日で済むようなことってことは、結構簡単なことなわけ?」

「難しくはないよ。露木君みたいな友達がいる今じゃ特に」

「まじで? なにげない会話から実現する可能性もあるわけ?」

「充分にあるんじゃないかな。結構ありふれたことだと思うから」

「ありふれたこと……?」

「たぶんね。おれの感じ方が違うのかもしれないけど」

「ええ……? 友達がいれば簡単にできること? 勉強はしたし、ちょっとした場所になら行きもしたし……。どこでできること?」

「家ではできないかな」

「どこかに行くってこと?」

「そう」

「どこに行く? お前が好きなもんってなんだっけ……。花、自然、人間……生き物……。え、七瀬?」

「一回忘れていいよ」

「七瀬じゃない。ああ、だったらおれ要らねえもんな。花は見に行ったし……あっ、キャンプ?」

「違う」

「人がいっぱいいるところか? じゃあ……え、人がいっぱいいるところってどこ」

「生き物は、関係ないようですごいある」

「え? 生き物そこにいんの?」

「生き物はいるよ。人がいる」

「その人は? 観察するための人じゃねえの?」

「違うね。そこで人間観察しようとはおれは思わない」

「ええ……?」

「いいんだよ、奇跡みたいに叶ってくれれば」

「これまじで叶わねえぞ。おれ全然わかんねえもん」

「知恵の輪みたいな感じで、考えずにいた方がすんなりいったりするんだよ」

「ええ……」

「大丈夫。もし本格的に夏休みの終わりが近づけば、おれが言うから。それに付き合ってくれれば」

「ええ、まじ超気になんじゃん」

まじで教えるつもりねえの、と問うと、十織はないと即座に答えた。