透明な海



やがて、十織は「一旦休憩」と提案した。

飲み物を手に、同時にベンチに腰を下ろした。

潤はほっと息をついた。どれだけ混んでいても、一度ベンチに座ってしまえば人の波に流されることはない。それが小さな開放感を誘った。


「おれ、今年の夏休みが一番幸せ」十織はぽつんと声を発した。

潤は鼻で苦笑した。「大げさなやつ」

「本当だよ」

「七瀬と過ごした夏休みはねえの?」

「ななは基本的に夏休みは忙しくしてる人だから」

「宿題に追われて?」

「違うよ」と十織は笑った。「ななは勉強は比較的得意なんだ」

「えっ、まじで?」

「『意外』なんて言ったら飴玉で口内撃ち抜かれるよ」

「え、なにそれ怖い」

「冗談だけど」と笑う十織へ冗談かよと笑い返す。

「ななは友達が多いから。だいたい友達と過ごしてる」

「へえ。ああ、確かに学校でも友達といたな」

「今もそうなんだね。ななの周りには人が集まるんだ。昔からそう」

「なんか変な成分振り撒いてんじゃねえの?」

「中毒性のあるやつね」

「そうそう」

「チーズかな」

「あ?」

「ん?」

「……いや」

なんでもねえと潤は苦笑した。