十織は花に向けたカメラのシャッターを切った。

目からカメラを離し、「綺麗だ」と呟く。

「しっかし混んでんなあ。花好きってこんなにいるわけ?」

「露木君も好きなんでしょう?」

「えっ、ああ……まあな」

「興味ないの?」

「興味ないことは……ない」

「なんだ、その程度だったの? なら他の場所にしたのに」

「いいよ、別に。おれくらいになってくっとどこでもそれなりに楽しめっから」

「へえ」

「つうかお前、七瀬は?」

「ななは暑いの嫌いだから」

「ええ……。にしても男二人でって」

「露木君くらいしか誘う人いないんだよ。かといって一人じゃ寂しいし」

「だから感性乙女かよ」

「女子の気持ちは露木君の方がわかってると思うよ?」

「そんなまじめに言ってねえけど」

「そうだ。じゃあこのあと図書館でも行く?」

「特に用ねえけど」

「そう? じゃあ書店?」

「いや、いいし。花畑で」

「そう。じゃあこの公園一周しようか」

反射的に「まじか」と声が出た。

「馬鹿かお前。あのばかでかいイベント会場と同じくらいの広さあんだぞ。そんでこのペースで写真撮ってちゃ余裕で一日終わんぞ」

「露木君、門限何時?」

「特にそんなもん設けられてねえけど。この公園自体終わるぞ」

「じゃあ急がないといけないね」

さあ行こうと歩みを再開する十織に「まじで一周する気?」と問いながら隣についた。

「ねえ、まじで一周すんの? 本気?」

「やってみようよ」

「ええ……」