「ごめんな」と発した声は、「ごめんね」と苦笑した十織の声と重なった。
「……なんで」
「こんな、つまらない話」
「つまんなくねえよ」
「露木君は優しいね」
「そんなことない。……十織とは、一緒にいたいからいるだけだ。一緒にいて苦じゃないから一緒にいる」
「おれは幸せだね」
言ったあと、十織は深く呼吸して天を仰いだ。
「ああ、満ち足りてる。……露木君といると、世界の綺麗さを再確認できるんだ。こうして、綺麗な空を見てるような感覚になる」
少しの間を空けて潤も顔を上げ、おれが明るい場所にいるからだろうかと思った。
「なあ十織。明日は、どこ行く?」
「……そうだね」
どこ行こうかと続けた十織の声は、軽やかで爽やかな、春の風を感じさせるようなものだった。



