十織は人間を愛せる人間だったわけではない。人間を愛すことしかできなかったのだ。
今まで、十織はこの世界に光を見いだせる人間だと思っていた。しかしそうではなかった。
光しか見えなかったのだ。
暗いところから明るいところは見える。反対に、明るいところから暗いところは見えない。簡単なことだった。
十織がこの世界の光を見られることから、潤は彼が明るい場所にいるのだと思い込んだ。
しかし、なにも明るい場所にいなければ明るい部分が見えないというわけではなかった。
潤は十織よりも明らかに明るい場所にいた。ゆえに、彼がいる場所がどんな場所かわからなかった。明るいところから暗いところが見えないからだ。
十織といると、潤は度々自分のけがれた部分を再確認した。
それは、明るい場所から暗い場所を見たとき、硝子にこちらの明るい景色が映るからだった。
十織を明るい場所にいる人間だと思ったことには他にも理由があると思う。
どこかから、周囲の光を集める彼を見たのだ。集まった光は彼を照らした。
そして彼はその光に手を伸ばし、触れるかのような素振りを見せた。
それが、潤に十織が明るい場所にいると錯覚させたのだ。
十織は人間を愛している。その事実にも、潤は一つの可能性を見出した。
彼は愛す「人間」に、自分自身を含めたかったのではないかというものだ。
自分を愛したい、もしくは愛されたいという強い願望が、彼に人を愛させたのかもしれない。
また、「可能性は無限」であるとしてすべてを受け入れているのも、それが作用しているのかもしれないと思った。



