「それで、十織はなんでそんなに『友達』が欲しかったんだ?」
少し間を空けて、十織は「いいの?」と返してきた。
「いいよ」
ふっと、十織が笑った気がした。
「承認欲求の表れだったのかもしれない」
「承認欲求」
「うん。認めてほしかったのかもしれない。というか、認め合える相手が欲しかったのかもしれない」
「誰かに心を開きたかったってことか?」
「繊細な言い方をすれば、そうなるかもしれないね。誰かと、思い切りわかり合って、語り合いたかったんだと思う」
この厳しい世界でそんなことを望むなんて甘いと言われてしまえばそれまでだけどね、と十織は苦笑する。
「おれは小学校に上がってしばらくしてから、ずっと『変人』だった。中には『すごいやつ』って言ってくれる人もいた」
「そりゃいいじゃんか」
「すごくなくていいんだよ、おれは。ただ周りと同じように、くだらないこと言って笑える友達を得て、それなりに勉強して、テストの結果で苦笑するっていう学校生活が送りたかったんだ」
おれの学校生活かな、と潤は思った。
「そんなもの、どこにでもある、特別の言葉なんか似合わないようなものだと思ってた。でも『変人』にとってはそうじゃなかった。まず友達ができなかった。似た人がいる可能性を期待して、高校は自分に合った場所に進んだ。でも、そこにも望んだ学校生活はなかった」
「……そうか」
「人間って優秀な生き物でね。第一印象だけである程度その相手のことが予想できちゃうんだ。『下谷十織』は多くの人に、『変わり者』、『話が合わない人』、『レベルの違う人』っていう印象を与えた」
孤高の天才というわけかとは言葉にしなかった。十織がその言葉と距離を置きたいことは潤にもわかった。



