「おれにとって、『友達』って呼べる存在がいることは憧れの対象だったんだ」

穏やかに声を並べて、十織は空を見た。昨日の豪雨などなかったかのような晴天だ。幼子が豊かなその感性で、羊だのライオンだのと名前を付けそうないくつかの雲に蝉の声が響く。

「『友達』と言える友達がずっと欲しかった。ななはいつも優しく接してくれて、おれが話すことも『おもしろい』とか『そうだね』って聞いてくれたけど、なながそう言う度に申し訳なくなった」

「……なんで?」

「おれは『変わり者』だから。普通の人とは感性とか考え方が違う」

「……そうか」

「ななも本当は退屈なんじゃないかって不安だった。でも一緒に帰るとき、毎日おれに話を振った。それに応えれば、嬉しそうに、楽しそうに、ななは聞き役に徹した。ななが余計な気づかいなんかしないような、自分のペースに他人を巻き込むような人だったら、もう少し素直にそれに甘えられたかもしれない」

「……おう」

七瀬ってそういうタイプじゃねえのか、とは言葉にはしなかった。