透明な海



濡れた髪の毛が額や上瞼に張り付く。

グラスに蜂蜜とレモン果汁を入れ、氷を入れて水を注ぐ。マドラーを回したあと、輪切りにしたレモンをグラスに入れた。

先に作ったレモンピールの並ぶ皿を手に、キッチンを出る。


「はいよ」

皿とグラスを置くと、静香は「お疲れ」と声を発した。

「認めるということを覚えたか」

うるさいと、静香はいやにはっきり発音した。


彼女が点けた「LIVE」の文字があるテレビ画面の中では、消防士らが消火活動に当たっていた。

「雨降ってねえとこもあるんだな」

「いや、そこじゃない」

「これどこ?」

「わかんない。なんか廃墟が燃えたみたいだね。さっき携帯にもニュースきた。放火とも見られてるらしいよ」

「穏やかじゃねえな」

「本当。離れた場所では兄がびっちゃびちゃで帰ってくるし」

「それだいぶ平和じゃね?」

「そう? 妹としてはだいぶびっくりしたけどね。家の前でなんか叫んでるし」

「友達見送ってたんだよ」

「へえ。潤にも友達なんてできるんだ?」

「うるせえ」

「どうやって出会ったの?」

「だからショッピングモールのフードコート。宿題やりに行って」

「ああそうか。ていうか今時勉強させてくれるフードコートなんてあるんだ?」

「珍しいよな。おれも思った」

「へえ」

「おう」

「ふうん」と言う静香へ苦笑すると、彼女もつられるように同じように笑った。

「ていうか、着替えたなら髪の毛乾かしたら?」

「いや、お前がおれの絶品レモン料理欲するから」

「にしてもよ。いつまでも目の前にびちゃびちゃがいるとか困るんだけど」

くっそと苦笑して、潤は腰を上げた。