信号で足を止め、十織は心底愉快そうに笑った。
潤は膝に手をついて肩で息をする。
「ああ、もう最高だ」
「どこがだ。ずぶ濡れで疲れただけなんだが」
「体育の授業でもないのに友達と走ってるんだよ? 最高じゃん」
「なんで。今夏休みだぞ。なんで休日に走んなきゃなんねえかな」
「雨降ってるんだもん。雨宿りする?」
「いまさら雨宿っても風邪っぴきまっしぐらだろうが」
「ならもう走るしかないね」
ああ、と潤はため息のように返した。
「つかここまで一緒に帰るの初めてだけど、お前んち こっからどんだけあんの?」
「あと三分くらい。歩いてね。露木君は?」
「おれもそんくらい」
「意外と家近かったりするのかな」
「さあ、どうだろうな」
「この横断歩道渡ってどう行くの?」
「まっすぐ。もうずっと」
「本当? おれも。この先の住宅地?」
「ああ、まあ」
ふいに曇天が稲妻に割れ、潤は「まじか」と呟いた。遠くで雷鳴が続く。
「雷も鳴ってきたね」
「直撃とかまじでごめんだけど」
「まだ遠いから大丈夫だよ」
あと三分で家着くしと十織は暢気な笑みを見せる。
「おれもあの住宅地に住んでるんだ。実は一緒にいたときもあったのかな。小学校とか」
「ああ、それはそうなんじゃね? こんだけ近けりゃ」
「六年間、何組だった?」
「ええ……? 一年、三年、四年が一組で、他二組だったかな」
「へえ、じゃあ一年は一緒だ。全然知らないね」
「小一の頃に同じクラスだったやつとか知らねえって。他全部違うクラスだろ?」
「でも合同の体育とかあったはずなのに」
「いや、覚えてるわけねえって」
「そうかな。中学は?」
「三組一組二組。三つの組全部に振り分けられたから」
「ああ、おれ一組三組三組。出会わないものだね。休日とかも全然じゃなかった?」
「ああ、おれ休日に外出ねえタイプだったから」
「へえ」
「つか――」
信号長くねと続ける直前に、横断歩道の先の光が変わった。



