透明な海



「母親は、すげえ男勝りなやつ。中身はな」

「へえ」

「見た目はそこそこで授業参観とかじゃあくるとざわつくくらい。いい意味でってのはとりあえずわかった。で、親父は……」

親父は、と潤は繰り返した。

「親父……は……平均的、なのかな。特にこれといったもんは」

「へええ。お父さんから教わったこととかないの?」

「記憶にある限り……。えっ、なんか教わったっけ」

「どうなんだろうね」

「まあ、そんな感じ」

「へえ。じゃあ、露木君はいろいろとお母さんに似てるの?」

「性格は割と似てるんじゃね? 特に話し方は自覚ある。複雑だけど」

「嫌いなの?」

「特別に恨んじゃいねえけど。でもあの半ば女捨ててるような人と似てるってなるとなんか」

「いいんじゃない? 露木君男だし」

まあそうなんだけど、と潤は苦笑した。

「見た目ではどこが似てると思うの?」

「目……うん、目元かな」

「へえ」と相槌を打って、十織は目を凝視してきた。

「なんか吸い取られそうで怖えんだけど」

「うん、確かに露木君のお母さん、美人そうだね。勝手なイメージだけど、髪の毛長くない? さらさらの黒髪」

「おれはエスパーと友達になったつもりはねえぞ」

「当たりだね?」と十織は笑う。「身長は比較的高かったり? あと、色白」

「……なんだろ、やっぱ第一印象間違ってねえかもしんねえ」

「当たりだね」と十織は改めて笑みを見せる。

「なんでわかるわけ?」

「なんとなくだよ。露木君を見て、想像しただけ」

「本当怖い。お前他人の全部見抜く能力とか持ってねえよな?」

「まさか」と十織は苦笑する。

「露木君の誕生日とか血液型とかわかんないし。もっとも、興味もないけどね」

「いきなり冷たい」

「興味あるって言ったら気味悪がるでしょう? 本当に興味はないけど」

「ふうん……。お前は人間のなにに興味があるわけ?」

「だから、生き生きした様とか、生きようとなにかを求めてるところ。生きてることが感じられる部分はなんでも好きだよ」

「ふうん。やっぱ変わってるな、お前」

「露木君だって。おれなんかとこんなに一緒にいてくれるの、肉親以外じゃななと露木君くらいだよ」

「七瀬レベルの変わり者か……。強烈だな」

「そうだね。ななも露木君もおれに言ったけど、二人の方がよっぽどお人好しだと思う」

「おれはただ気が合いそうだと思ったから関わって、実際に合ったからそれを続けてるだけ。意味もなく全人類を愛したりしない」

「嫌な言い方するね」と十織は苦笑する。「『意味もなく』なんて」

潤は仰向けのまま、深く吸った息をゆっくり吐いた。

「夏休み、ずっと続きゃいいのにな」