よっ、と、十織は芝生に寝転んだ。心地よさげに晴天を眺める表情は、短い前髪を揺らす暑苦しい風さえも春の爽やかなそれを思わせた。

「いい音がする」十織は静かに言った。それに耳を澄ませるようにゆっくりと目を閉じる。

潤も彼を真似るように寝転び、瞼の裏に暑い赤を映して耳を澄ました。

「どんな音?」

「自然の音。風と、鳥の声。蝉の声も」

「自然が好きなの?」

「好き」

「なんでそんなに? 死者の魂を嫌うほど」

「これは父親の影響かな」

「へえ?」

「父親は自然が好きなんだ。自然体、と言う方が近いかな。風が吹いて、鳥が鳴いて、虫が季節を伝え、それに呼び覚まされるように野草が芽生える。そんな世界を、父親は好んでる」

「ふうん。確かに、お前の母ちゃんと惹かれそうな親父さんだな」

「そうかもしれないね。二人とも『(せい)』が好きみたい」

「そんな二人の子じゃあ、お前はそうなるわな」

「露木君の両親はどんな人なの?」

「ええ……?」

知りたい、と疑問符を返すと、十織は疑問符を外して頷いた。そうかと潤は苦笑する。