ふっと小さく笑う十織へ、潤は「なんだよ」と返す。
「おもしろい種が手に入ったなあと」
「なにが育つんだ?」
「思考」
「ええ……」
「人間の存在意義なんて、おれはまず考えない」
これも露木君に会えたおかげだと、十織は嬉しそうに言って天を仰ぐ。
「やっぱりこの世界はおもしろい。知らないことだらけだもん」
「本当にガキみたいな性格してるよな」
「好奇心が旺盛って意味かな?」
「それが嬉しいならそれでいい」
「好奇心は止まないよ。その自信はある」
「へえ。まあ、『人間の存在意義』についてなにか思いついたことがありゃ教えてくれ」
「そうする。いやあ、確かに、なんで人間っているんだろうね。地球に人間という生き物がまるでいない時代も四十五億年はあったわけだから、いなくても問題はないはずなのにね」
「四十五億年?」
「ほら、地球が誕生してからおよそ四十六億年って言われてるじゃん。それで、五百万年くらい前に進化が始まったって。だから――」
えっと、と十織は斜め上に視線を投げた。
「四十五億九千五百万年くらいかな。それくらいの間は、人間という人間はまるでいなかったわけでしょう?」
「ああ……」
随分深いとこ行ったな、と潤は苦笑した。
「今の『人間』の形に近づくことで何らかのメリットがあると考えたためなんだろうけど……」
露木君の気にしてるのはそういうことじゃないよねと苦笑する十織へ、潤はああと即答する。こっちに戻ってこいと願った。
「なんで生物が数を増やそうとしたかってことだよね」
「ああ……まあ……」
そうなるのかな、と潤は小さく続けた。
「そりゃあ……あれだ、きっと、数が多い方が有利に理想を具現化できると思ったんだよ。当時の『理想』というと……強く見せることとかかな。なんかすごいね、本能的にそういうことがわかってるなんて」
「ああ……そうなあ……」
「でもよく増やし方を知ったよね。すごくない?」
「ああ……」
「これは本当にもう本能としか言えなそうだね」
ああ素晴らしい、と心酔した様子で顔を上げる十織へ、潤はまじかと苦笑した。どうしようと思った。



