「ねえ、露木君」十織は静かに言った。
「本当にななのこと――」
「好きじゃねえって」
「そう……。本当に?」
「おれは七瀬に嘘のつけない男と称された経験を持つキングオブピュアだぞ。同時に嫉妬深い的なことも言われたジェラシーソウルで生きる男だぞ。そんなおれが七瀬を好きじゃあ、お前今生きてねえから」
「……そう。でも露木君、カップルとか嫌いらしいのに随分女子に詳しいね?」
「読書家の知識舐めんなよ。あとおれ、速読得意だから。普通に読んでも二時間で一冊読むから」
「ああ、それはすごい」
「だろ。二十四時間で十二冊読む勢いだからな」
潤は小さく唸り、「よし」とそれを止めた。
「じゃあこの際だから、おれの疑問教えてやんよ」
「えっ、本当?」
「ああ。おれの長年の疑問は人間の存在意義だ。そのヒントが得られるかもしれないと考えて文学の世界に飛び込んだが――」
「ああ、ヒントは得られない、と」
「そう。増えたのは人間への嫌悪感だけ。まあ、お前と仲よくなってからはちょっと変わったけどな」
「へえ。人間の存在意義に疑問を持ってるの?」
「疑問っつうか……人間っている必要あんのかなって思ってる」
「へえ。それは確かに『疑い』だね」
「で、それを問うてる」
疑問だ、と少し異なる意味合いで声を重ねた。
「そいうこと」
「へええ。長年のって言ってたけど、いつから?」
「小学校卒業したかしないかくらい」
「へええ、なんて大人びた小学生」
「大学生みてえな高校生に言われたくねえし」
「いやいや。ええ、小学生でそんなこと考えるの?」
「まあ、おれは」
「なにをきっかけに?」
「すげえぐいぐいするな」と潤は苦笑した。
「きっかけは別になかった気がするけど……どうだったろう」
「へええ」
ふうんと言って、十織は「人間の存在意義ねえ」と顎に手をやった。
「まあ、お前とならちょっと話し合えるような気はしてた」
「そうだね。おれも興味深い」
「気が合うな」
「みたいだね」
おれは嬉しい限りだよと言う十織へ、潤はおれもと短く返した。



