透明な海



「露木君には大切な人っていないの?」

「ド直球だな。言い方よ」

「じゃあ……『露木君にも大切な人っているの?』」

「マイルドになったはずなんだけどな。まあいいや。別にいねえかなあ。なんで?」

「ううん、なんとなく」

「……『先輩』、のこと考えてたのか?」

「少しね。本当に人って変わるんだって思って」

露木君のおかげでねと、十織は目を合わせてきた。

潤はまあなと返して目を逸らす。

「……『先輩』、どうしてるだろうな」潤は言った。

「露木君の言うように、すっかりまじめな人になってるかもしれない。実際、すごくまじめな人だろうから」

十織は前方を眺め、ふっと憂いを帯びた笑みを浮かべる。

「おれのこと、覚えてるかな。覚えてたら、どう思ってるだろう」

「人生の転機をくれた、高校時代の大切な後輩とでも思ってるんじゃねえの?」

「そうかな。そうだったら、おれは嬉しい」

どうか、と続けて、彼は憂いを残して笑みを消した。

「どうか、おれの言葉に苦しんでないでほしい」

「まあ、それはなんとも言えねえな」

「うん」と、十織は微かな声で頷いた。

「でも、そんなことなら考えねえのが一番なんじゃねえ?」

まあ、と潤は苦笑を挟んだ。