「お前にも軽蔑するような人間っているんだな」

「軽蔑はしてないよ」

「自ら心霊スポットに行くようなやつも?」

「おれには全然考えられないけど、そういうことが好きな人もいる。おれにはそれを否定する資格も、そうすることによって得られるメリットもない」

「ふうん。お前って本当に全部を『考える』人だよな。もっと感じた方が楽しいと思うぞ」

「おれはこれで不自由はしてないよ。それに、充分この世界を感じて楽しんでる」

「ああ……。ああ、それもそうか」

自然を感じることを教えてくれたのはこいつだったなと潤は思った。


彼は十織の隣に腰を下ろした。芝生のかたさがちくちくと尻を刺す。

「やっぱりここに落ち着くな」潤は言った。

「前はショッピングモールだったのにね」

「ああ、そういえばショッピングモールだったな、会ったの」

「よく覚えてる。なんとなく、露木君とは仲よくなれる気がした」

「へえ。当たったな」

「うん」

「おれの第一印象は外れた」

「そう?」

「怖いときもいだったから」

それはそれは、と十織は苦笑する。

「まずまず、初めに思った年齢も違ったし」

「大学生じゃないのって言ってたね」

「あんなやばいやつ感出た、落ち着いたやつとか教室にいねえし」

「おれって落ち着いてるの?」

「まあ、話していくとそうでもなかったんだけど。おれの第一印象全然当たんない疑惑を確信に持っていくのやめてくんねえかな」

「まあ、第一印象なんて――」

「あいまいなものだからね」潤は十織の声を遮った。

適当に間を空けて、「てか?」と続ける。

「正解」と十織は微笑んだ。