背後を無数の車が走っていく。さんさんと照らす太陽の下、潤は額に滲んだ汗を拭った。

「……これ、危険な現場とか誤解されねえよな?」潤は言った。

「危険な現場?」十織はぽかんとした様子で言う。

「この下で前、物騒な事件があったろ」

「……え?」

「なんか、若い女の人がどうのこうのって」

「……え、嘘でしょ?」

「いや、何年か前にあったろ。まあ、どれだけの人が覚えてるか知らねえけど」

「……本当?」

「ああ。近くの川じゃんかってびっくりしたの覚えてる」

少しの間を作って、十織は「まじか」と呟いた。

「よし、ちょっと場所変えよう」

「お化け出るかもしれねえからな」

「嫌なこと言わないで。大丈夫、こんなのどかな場所にそんな不穏な……」

大丈夫大丈夫と繰り返す十織の耳に「『こんなのどかな場所』だからこそ居座ってるかもよ」と囁いてやれば、彼は「嫌だ」と叫んで飛び跳ねた。

「漫画みてえ」と笑うと、「笑い事じゃない」とまじめな様子で返ってくる。