等間隔で引かれた白線の先に光る赤を認め、十織はそっと足を止めた。
先に止まっていた同年代の女子二人が、はははと豪快に笑う。
「ちょっ、やばくない? だってさ、枝豆食ってるって。なんで枝豆なのよ」
「まじなんだって。あのゲーム、本当に幽霊が枝豆食べてんの。全員。そんで見つかると、全力で枝豆投げてくんの。わざわざさやから出して」
「中身だけ?」
「中身だけ。そんで困るのが、たまに船に乗ってる客も枝豆食べてるから、普通の人間でもやべって思うっていう」
「へえ」と返して、一方の少女は耐えられないといった様子で笑い出す。
「なになに。いや、まじで結構怖いからね、枝豆攻撃。レーザービーム並みの勢いで飛んでくるから。当たったら即死だかんね?」
視線の先の光が青に変わる。十織はそっと歩みを再開した。
彼女らがどこの誰かは知らない。しかし、笑っていることが嬉しかった。
一日の時間は限られている。そのうちの少しでも多い時間を、笑って過ごせればいいと思う。
さて、と十織は考える。おれが笑うとき――。
ななの存在が頭をよぎった。
自信を持て、か――。
潤の言葉のあと、あの幼稚園に通っていてよかったと言ったななの笑顔を思い出した。