透明な海



十織は、この世界に光を見ることができる。その能力が長けているように思える。

彼に出会うまで、潤にそれはできなかった。

この世界など、欲と感情が蔓延る小汚い場所だと思っていた。

しかし、十織はその捉え方を少しばかり変えた。

風には欲も感情もない。磁力のようなものに引き寄せられ、暖気と寒気が混ざり合った結果だ。河川もそうだ。雨や雪の水が引力に流されているだけで、それらに欲も感情もない。

この世界は薄汚れたものばかりでもないのだと教えられたような気がした。

十織に出会って、久しぶりに素直になった気がした。少しばかり、自分自身も純粋になれた気がした。


「……自然って、綺麗だな」

潤が言うと、十織はふっと笑った。

「でしょう? おれはこの世界が大好きだ。なにもかもが美しい」

光の精のようだと思った。

光しか見たことがない、明るい場所にしかいない不思議な存在――実際にそういうものが存在するという話は聞いたことがないが、こいつはそういう存在なのではないかと思えてしまう。

それほど明るいもので、馬鹿みたいに純粋なのだ。


「今度さ」十織は言った。

「露木君のことも教えてよ」

潤は鼻で笑ってやった。

「気が向いたらな」