握り飯の海苔がぱりっと破れる。
「露木君はさ」と十織は隣で言う。
「なんであんなに女子に詳しいの?」
「あ? お前、おれのシットマン舐めんなよ?」
「シットマン? オットマンみたいな?」
「おれの嫉妬魂舐めるなっつったの。おれはもう何十人も呪ってきたわけよ」
「え? 不穏な話はやめてよ?」
「あちこちにいんだよ。うきうきピーポー」
「うきうきピーポー……」
「やつらはだいたい、誰かに恋愛感情を抱いてそれに踊らされてる。おれはそういう輩が嫌いだ。だからやつらを呪う。精々幸せになれよくそがと。ただし見せつけたら後ろから刺すぞと」
「ええ……」
「そういう経験を幾度となくしてきたわけだ、おれは。その分、他人様の恋愛模様は目にしてきたわけだ。まあ、するとだいたいわかってくるよな、女子の考えることとか」
「へえ、すごい」
「まあ、独り身だけど」
「まだまだ出会いなんていくらでもあるよ」
「まあ別に出会いを求めてるわけでもねえけどな」
潤は袋から炭酸飲料のペットボトルを取り出し、脚でボトルを挟んだ。脚に入れる力を加減しながら慎重に蓋を回すと、気の抜けた音が鳴った。少し飲んで蓋を閉め、袋にペットボトルを戻した。