蝉の声を聞きながら、潤は自分の腹部に微かな振動を感じた。

「腹減ったな」

「なにか食べる?」

「いや、金ないし」

「奢るよ」

「どんな高いもん食うかな」

「ほどほどにしてね」と苦笑する十織へ、「冗談だよ」と同じように返す。

「まあコンビニくらいは行けるし、涼むがてら行くか?」

「うん、いいよ」

よっこいしょと上体を起こし、潤は息をついた。

「まさか土手に居心地のよさ見出しちまうとは思わなかったわ」

「いいでしょう?」

「慣れって怖いよな」

「なかなか慣れないのも困りものだよ」

「なにか慣れねえことあんのか?」

「露木君といるの、なかなか慣れない」

困ったよねと苦笑する十織へ、潤は「はあ?」と返す。

「早く慣れろよ。おればっかり一方的に友達だと思ってたくさくてくそ恥ずかしいじゃんか」

「露木君、毎日印象が変わるから」

「まあどう思っててもいいんだけど。とりあえずおれがいる日常は日常にしてくれ」

「頑張ってみるよ」と笑う十織へ「ええ?」と返す。

少しの沈黙に腹の悲鳴が響き、「早く行こうぜ」と潤は立ち上がった。