「自信を持て。それが負担になるなら、なにも今すぐにとは言わない。でも、人間は変わるぞ」
十織は静かに唇を噛んだ。潤んだ目であちこちへ視線を移す。
「泣きたきゃ泣け。涙は心の栄養だと聞いたことがある。ストレスの解消にも役立つと聞いた。だから泣きたきゃ泣きゃええよう? 栄養だけに? ええようって?」
七瀬が言いそうなことを考えている間に俯いていた十織は小さく噴き出し、「鼻水出た」と笑う。
「きったねえ」と笑い返し、潤はつまらない思考に乾いた口と喉にメロンソーダを流し込んだ。
空いたグラスをテーブルに置くと、氷がからんと軽い音を鳴らした。
「なあ、十織」
「ん」と、十織は俯いたまま声を返してきた。
「今度、いろいろ教えてくれないかな。十織のこと」
涙を拭っていた動きをぱたりと止めた彼へ、潤は「気が向いたらさ」と笑い掛ける。
「大丈夫、おもしろくなかったらおれ、すぐ忘れるから」
今日この店のメロンソーダ消費すげえだろうなと笑って、潤はグラスを手に席を立った。