透明な海



「あいつみたいなのが好きなんだな、お前」

十織は短く息をついた。

「あれはあくまで愛らしいと思う異性の体型で、必ずそういう人を好きになるってわけじゃ――」

「わかってる。別に誰でも好きになりゃいいと思うんだけど」

ただと言いながら笑ってしまうと、十織はなにさと苦笑した。

「なんであいつだった?」

「優しいんだよ、本当に」

「どっちかと言うと狂暴な部類に属すと思うんだけど。なんせ頭突きだぞ?」

「それがすべてじゃないでしょう」

「飴くれるところか?」

「受け取ったことがない」

「じゃあどこが」

「別に」と呟いて、十織は「えっ」と目を大きくした。

「まさか……」

「いやそれはねえ」

「露木君もななのこと――」

「だからねえって。何回でも言う。そりゃねえ」

「じゃあなんでこんなことを」

「暇だから、じゃあ理由になんねえかな」

「ええ……」

「考えてもごらんよ。男子高校生二人でドリンクバーだけ頼んでさ。宿題も終わって財布だけ持ってファミレスにいんの。そりゃあ友達の好きな人確認したくなるだろ。それしか話題がねえ中、こいつじゃねえかなって人がいんだもん」

「ええ……」

「で、あれから七瀬とは会ったり話したりしたのか?」

「まあ」

「なにした?」

「挨拶した。今日。家出るときに」

「へえ。あいつどんな感じだった?」

「なんか……変な距離感が……」

へえ、と潤は眉を上げた。