透明な海



「妹ちゃん、いくつ?」

「二個下」

「へえ。かわいいでしょう」

「普通」

潤が短く返すと、七瀬は「露木君らしいね」と苦笑した。

潤は少し沈黙を守ったあと、「あのさ」と声を発した。

「女子って、本当に好きな相手にチョコとか渡すの?」

「ん?」

「最近友達にあげるのが多くね?」

「ああ、そんな雰囲気もあるね。でも、本命とか義理とかっていうのも健在じゃない?」

「ふうん。七瀬は? 本命チョコとやらはあげたのか?」

「どうなんだろう」

「『どうなんだろう』?」

「本命と言えば本命だし、友チョコと言えば友チョコだし」

「ふうん。複雑だな」

「それが人間関係ってやつでしょう」

言ったあと、七瀬はふっと笑った。

「この複雑さがどうのこうのなんて考えるようになったら、あのチョコは本命になるね」

「へえ」

「ふふっ。そんなことになったら、露木君に糞をくらえとか言われるんだよね」

「まあ別に好きにしたらいいと思うけどな」

「やっぱり馬鹿馬鹿しいけど――」

そう言う七瀬を見ると、彼女は「そんなこと思ってる顔してる」と笑みを見せた。