「じゃあ、苦手なことは?」彼は言った。
「そんなんばっかだぞ。まず人付き合い」
ええ、と十織は驚いたように言う。
「充分上手だと思うけどな」
「これでうまきゃへたなやつなんかいねえだろ」
「そうなの? おれとここまで一緒にいてくれるのは露木君くらいだよ?」
「じゃあまあ、互いに変わってるっつうことなんじゃね? それぞれ、同程度」
「ああ、それは否定できないな」
「自分の長所と短所ってどこだと思う?」潤は言った。深い意味はない。
「長所と短所? 長所は……まあ、冷静に考えられるとかかな。短所は……人に合わせられないとか消極的とか。いっぱい。露木君は?」
「おれは……好きなことに関してはそこそこな記憶力を発揮すること。長所な。短所は……器が小さい」
「器小さいの?」
「正直まじですぐにいらいらすんぞ」
「なににそんなに腹を立てるの?」
「理不尽なこととか、気に入らないことがあれば。当たり散らすことはねえけど。そういうやつ、心底軽蔑してるからな。そういうやつにはならねえようにと」
「……そうか。みんなそうなんだね」
「みんな?」
「学校にいた先輩で、他人に当たる人を強く軽蔑してる人がいたんだ。自分もそれに近いものがあるとして、自分のこともひどく嫌ってた」
「へえ」
「一度腹が立つと、自分でも制御できなくなるらしい」
潤が鼻で笑って「愚かだな」と言うと、十織はぴくりと目を大きくした。そしてすぐに、悲しげな表情を浮かべる。
「本人も言ってた。成った人間にとって、感情はあくまで道具であり、それを制御できない者は愚かなんだと」
「その通りだ」
「そう思う人は少なくないかもしれないね」十織は静かに言った。
目をやった先で、彼は目を伏せていた。憂いのようなものが色として見えるような様子だった。



