透明な海



「絵へたなんだ?」

「壊滅的って言われたことある。ピカソ的なセンスがあるとも言われたけど、直感は否定的な意味だと捉えた」

「まじか。正直どんなもんか気になるけどな」

「亀描いたらナメクジって言われるくらい」

「……えっ、手足は?」

「描いたんだけどね」

「亀に触覚つけなかったろ?」

「そうなんだけどね」

「まじか」

「あと、花描いたらイソギンチャクって言われた。ワカメって言う人もいたけど」

「……確かに、壊滅的かもな。花がイソギンチャクか……。そんで、裁縫もだめだと?」

「できるけど、やらせない方がいいだろうね。『間違えてはいないけどなんか違う』って小学生の頃、家庭科の先生ぼそって言ってたから」

「ああ、できてない自覚ねえんだ?」

「やり方は合ってるはずなんだけどね」

「……ちなみに? どんな仕上がりになるわけ?」

「『チャコペン忘れちゃった?』って真剣に訊かれるくらい」

「それは?」

「簡単な小物入れ、手縫いで作ったとき」

「ああそうだ、ミシンは?」

「準備は得意だよ」

「そういうこっちゃねえ。ミシンでなら普通に縫えんじゃねえのって」

「随分急ぎ足でしょう、あれ」

「……遅いモードみたいなのもあっけど」

「機械ほどのレベルになってくると、『遅い』が充分に速いじゃん」

「ええ……」

「ちなみにおれのミシンの腕前は、裾上げしようものなら、始まりに終わりが出会わないくらい」

「なんで」

「まあ、同じ場面は二度とないからね」

「まあなあ」と静かに返して、潤はすぐに「いやいや」と苦笑した。

「出会えよ」

「なんか、途中であちこち寄り道もするしね」

「まっすぐ進めよ。まっすぐ行って帰ってこいよ。なんで? 放っとけば ほぼほぼ まっすぐ進んでくじゃん」

「おれが扱うと、ほとんどのミシンが意志を持つようになるんだ」

はははと苦笑する十織へ、笑えねえよ苦笑を返す。